2025 高3探究「映像表現」
2025.12.24
― “伝える”を本気で考え、映像に落とし込む ―
高校3年生の「探究」授業では、生徒一人ひとりの関心に応じた多様な講座が開設されています。
その中で、昨年度より美術科・音楽科・技術科・国語科の教員が連携して運営している「映像表現」講座には、今年度14名の生徒が受講しました。
本講座では、映像作品の鑑賞や評論を通して、映像表現が社会とどのように関わってきたかを学ぶとともに、チームでの映像制作に取り組んでいます。
今年度特に印象的だったのは、生徒たちが「映像をつくること」そのものだけでなく、「誰に、何を、どのように届けるのか」という点を、これまで以上に意識しながら制作に向き合っていたことです。
授業の前半では、ワンカットの無声映像制作に挑戦しました。
音や編集に頼らず、構図や動きだけで伝える経験を通して、映像表現の基礎と、その難しさを体感しました。
その経験を踏まえ、後半ではCM制作に取り組みました。
今年度も、株式会社電通のシニアビジネスプロデューサー 高井嘉朗さん(本校OB)と、クリエーティブ・プランナー 福島崇幸さんにご協力をいただき、実社会と直結した視点を授業に取り入れることができました。
10月に実施された高井さんによる講演・ワークショップでは、「CM制作の本質」をテーマに、広告が溢れる現代社会において、どのようにすれば人の心に届く表現になるのかを具体的に考えました。

生徒たちは、アイデアの面白さだけでなく、伝えたいメッセージの明確さや視点の設定がいかに重要であるかを学びました。
今年度の特徴として、その学びが制作過程に自然と反映されていた点が挙げられます。
企画段階から「なぜこの表現なのか」「誰に向けたCMなのか」といった問いがチーム内で交わされ、試行錯誤を重ねながら作品を磨き上げていく姿が見られました。
制作テーマは「海城の魅力を伝えるCM」です。
限られた時間と条件の中で、視聴者の立場に立ち、構成や演出を工夫した多様な作品が完成しました。
11月に行われた発表会では、高井さん、福島さんにも再びご来校いただき、多くの教員が見守る中、全作品が上映されました。
それぞれの作品からは、生徒たちが考え抜いた意図が伝わり、表現としての完成度だけでなく、「伝えようとする姿勢」そのものが印象に残る発表会となりました。

講評では、作品の良さを丁寧にすくい上げつつ、さらに表現を深めるための具体的なフィードバックをいただき、生徒たちにとって次につながる大きな学びの機会となりました。
以下は、受講した生徒の感想の一部です。
・「CMは基本とばされるもの」「何を伝えたいかが大事」ということを知り、制作していったが、興味を引くようにすることと、伝えたいことを伝えるということの両立が難しく、また、30秒でそれらを表現しきる大変さを味わった。また、普段見ているCMたちがどれだけプロフェッショナルなものかを改めて感じた。
・作品を発表した直後、電通の方や他の先生からもらった感想・アドバイスが的確であったと感じた。特に電通の方など、例えば広告のターゲットを「受験生の小学生」に設定した時、まずこの学校に興味を持った状態でいるのか否か、志望校を決めかねている人に向けてなのか、など自分がふんわり想像していた以上に、目標を細かく設定してから具体的に広告制作の計画を立てていく方が良いのだろうなと感じた。CM制作という大きな課題に対し、ターゲットや背景を考えてから立案していく時間は長く取ったほうが良いのかなと感じた。
本講座は昨年度から継続して実施していますが、今年度はその積み重ねの上に、生徒一人ひとりの主体性や思考の深まりが、より強く感じられる授業となりました。
映像表現を通して「伝えること」と真剣に向き合った経験は、生徒たちの今後の学びや進路においても大きな財産になるはずです。

最後に、ご多忙の中、本講座にご協力いただいた株式会社電通の高井さん、福島さんに、心より感謝申し上げます。